授業テーマ
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人は、日々、泣き、笑い、おびえ、また怒りながら生活を営んでいる。人の日常から、こうした感情を切り離して考えることはできない。しかしながら、つい最近まで、感情は、どちらかと言えば、非合理・無秩序なるもの(人の理性をかき乱すもの)として扱われ、必ずしも十分な心理学的検討を施されてこなかったと言える。本講義では、感情研究の最先端の知見に基づきながら、従来、優勢であった非合理・無秩序なるものとしての感情観を見直し、その本来の(生物学的および心理社会的)機能や生起メカニズムなどについて、学際的見地から幅広く考察を行うことにしたい。また、感情の神経生理学的基礎についても概説し、特にその欠損や病変がいかなる心理的機能不全に通じ得るかを見ることにより、感情の本質的重要性ならびに進化論的意味などに関しても深く考究したいと考える。さらに、感情の起源と発達、および感情が子どもの他の領域の発達に対していかなる意味を有するのかについても、近年の感情的知性に関わる諸議論なども踏まえつつ、言及することにしたい(時間にゆとりがあれば、政治・経済学、社会学、コンピュータ・サイエンス、ロボット工学などにおける感情研究の展開についても取り上げたい)。
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授業のねらい・到達目標
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心理学の新しい可能性を切り開くための最先端の知識と感性を身につける。特に近年、進展の著しい感情研究の領域において、学際的視点から、新しい研究の可能性を探る。
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授業の方法
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基本的に講義形式で授業を行う。
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授業計画
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1
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感情とは何か?:感情の定義と感情観の変遷
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2
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感情の機能性と合理性①:感情の個人「内」機能
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3
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感情の機能性と合理性②:感情の個人「間」機能
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4
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社会性を紡ぐ感情:社会的感情と自己意識的感情
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5
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両刃の剣としての感情:合理性と非合理性の間
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6
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感情の生起メカニズム①:認知的評価と感情
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7
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感情の生起メカニズム②:身体的基盤・神経生理学的基盤
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8
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感情の起源と発達①:社会的感性から拓かれる発達
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9
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感情の起源と発達②:感情の発達プロセスとその機序
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10
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感情の起源と発達③:アタッチメントとパーソナリティ
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11
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感情の病理・感情と病理
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12
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感情と進化:「ヒト」における感情の本性
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13
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感情と文化:「人間」における感情の本性
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14
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感情的知性:感情に対する賢さ・感情に潜む賢さ
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15
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総括と展望:感情への統合的アプローチ
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その他
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教科書
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ディラン・エヴァンズ著・遠藤利彦訳
『感情 (一冊でわかる)』
岩波書店
2005年
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参考書
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藤田和生編
『感情科学』
京都大学学術出版
2007年
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成績評価の方法 及び基準
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試験(50%)
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平常点(30%)
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授業参画度(20%)
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