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社会学特殊研究2

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科目名 社会学特殊研究2
教員名 鬼頭 春樹
単位数    2 学年    4 開講区分 文理学部
(他学部生相互履修可)
科目群 社会学科
学期 前期 履修区分 選択必修
授業テーマ 現代TVドキュメンタリーの冒険
授業のねらい・到達目標 あなたが賢いTV視聴者になることを祈ってこの講座は設計されます。一言で云うとTVドキュメンタリーとは、視聴者が未だ経験のしたことのない「非日常性」の世界へ誘いです。「未知との遭遇」と呼べるでしょう。そこに他者との出会いがあり、自己研鑽の緊張関係が生まれます。前期では現代のドキュメンタリーがどんな領域でチャレンジを重ねているのかを追求します。それは一言でいえば「不可視の世界」でのTVの大胆な挑戦です。人体内部のDNAレベルでのがん細胞の追求。大宇宙のブラックホールの世界。深海を流れる深層海流の2000年単位の動き。さらにはミイラの発掘現場に残された小麦の種から2000年前の台地の営みを推理するドキユメンタリー。そしてなぜ日本が中国大陸で長期にわたって大部隊を展開できたのか。その軍事費のからくりに迫る世界。アヘンの専売制度からのあがりがどのように機密費に流用されていったのか。ミクロとマクロの自然界、そして歴史を動かすシステム。こうした「不可視の世界」へのチャレンジです。それを可能にするのは最新の映像技術です。コンピュータグラフィックスやデジタル合成技術、さらには小型カメラやモーターパラグライダまで、さまざまな新しい手法を駆使した世界です。君たちの若々しい感受性でこうした興奮の世界の息吹をたっぷりと吸い込んで下さい。賢い視聴者を生むテレビ・リテラシーの授業です。
授業の方法 DVDによる30分程度のテレビ番組の視聴、解説から始まり、学生のみなさんとの意見と感想の交流で進みます。ドキュメンタリーが取り上げる「非日常性」の領域は広大ですが、この講義では、現代のドキュメンタリーが映像技術の進歩とともに歩んでいる新たな領域を「現代派」と名付けて光を当てます。試験は口頭での発表です。初回の講義で説明します。
履修条件 特にありません。
事前学修・事後学修,授業計画コメント 毎回飽きないよう、視聴するテレビ番組の選択には、バラエティ豊かなものとなるように十分に意を配ります。以下は現段階の予定で、今後、変化する可能性があることをお含み下さい。
授業計画
1 オリエンテーリングです。最初の回でこの講義のめざす全体が容易に理解できるように配慮します。「ミラクルボディ・滑降」では、時速150キロの高速で滑走するスキー選手が経験する肉体と精神の緊張状態を、小型カメラをはじめ、脳のスキャニング、身体につける小型測定装置などで解明しています。最新科学による「調査報道型」番組です。だれもこれまで映像として扱えなかった「非日常性」の世界を見事に描き、感動を与えます。
2 「ハイビジョンスペシャル・赤い翼」、モーターパラグライダーで飛ぶカメラによる超低空飛行、なめらかな方向転換などあたかも「鳥」の目のように自在に飛び回る機材を駆使した、アドベンチャードキュメンタリーです。撮影行為自体をイベント化しているとも云えます。 決してハイテクではありませんが、不可視の世界を描くにはピッタリの飛び道具なのです。
3 「新シルクロード・ラピスラズリの輝き」、紀元400年に中国シルクロードに生まれた仏教僧クマラジューの物語です。漢字書体のエクリチュ―ルを巧みにモデル役の僧侶の実写画面に合成し、過去と現在が混在する美しい映像世界を醸し出しています。僧と母親との交互に登場するナレーションも情感を盛り上げています。ディレクターの個性が横溢する「エッセー型」の作品です。
4 「新シルクロード・トルファン灼熱の大画廊」、かつて存在した仏教遺跡の大画廊が列強の探検隊によって略奪され剥ぎ取られてしまい現地にはほとんど痕跡をとどめなていません。それら各国の断片をデジタル映像で再現し、コンピュータグラフィックスで現地に擬似空間が再現されます。不在な遺跡を再現するという壮大な「非日常性」の営みは感動をさそいます。現代だからこそできる文化財保存です。
5 「調査報告・日本軍と阿片」は国家的な犯罪行為を暴いた番組です。満州事変から生まれ中国全土にまで拡大した日中戦争と阿片の存在は切っても切れない関係にあります。いったいだれがなんのために阿片の密売に手を染めたのか。社会派調査報道番組の領域です。
6 「NHK特集・世界の科学者は予見する 核戦争後の地球:地球炎上」は、現代派ドキュメンタリーの先鞭となった番組です。この番組は、核戦争が都会をどのような修羅場とするかを科学者の分析と特殊撮影技術で描いた恐ろしい「非日常性」の世界です。あくまで想定事態ですが、「未来型調査報道」と位置づけることができるでしょう。「イタリア賞」を受賞し、世界的な反響を呼んだドキュメンタリーです。
7 「驚異の人体:つきとめよガン発生の謎」はDNAレベルでガン発生の謎に迫ります。ドキュメンタリーの領域は拡大し、人体の中にまで潜入する。コンピュータグラフィックスと小型カメラを駆使した「神の描いた人体の設計図」をめぐる物語です。
8 「海:深層海流2000年の大航海」は誰も知らない深海にメスを当てたドキュメンタリーです。そこには、なんと2000年周期でゆっくり流れる深層海流があり、その存在が地上の気候に影響していることをスクープした番組です。
9 「宇宙:ブラックホールー謎の天体」は、電波望遠鏡が捉える最新の宇宙像を描きます。ドキュメンタリーは「宇宙空間」をどう描いてきたか。不可視の世界であるブラックホールへの挑戦です。
10 「調査報告チェルノブイリ原発事故」は目に見えない放射線を瞬時に測定し、映像化するポータブルな装置を武器に、ソ連の原発事故がいかに世界を汚染したかを、ヨーロッパを舞台に調査した調査報道番組です。モンテカルロTV祭はじめ数多くの国際コンクールで受賞に輝きました。
11 「4000年のミイラ」。タクラマカン砂漠のど真ん中で発掘された4000年前の集団墓地。そこから見つかった女性のミイラが身に着けていたポシェットのなかに小麦の種があった。そのDNA鑑定から、この地が太古にあっては水があり小麦畑があり、牛が飼育されていた豊かな農地だったことが解る。現代の環境を解明する科学調査報道番組。
12 「ホットスポット最後の楽園・マダガスカル」に見る動物ドキュメンタリーの世界。対象が動物となると撮影の困難性は倍化します。さらに進化を扱うことは、過去の世界へとタイムスリップすることになります。
13 「アインシュタイン・ロマン:時空ー悪魔の方程式」。物理学者アインシュタインが残した一般相対性理論をかたちずくる重力方程式を軸に、カエルと悪魔の会話で構成されるユニークな哲学番組です。さまざまな映像処理が施され、TV界に問題を投げかけた超チャレンジ精神に満ちた番組です。
14 「園の戦争」は戦時経済の大掛かりなからくりを抉った番組です。なぜ経済力のなかった日本が広大な中国大陸を舞台にまがりなりにも戦争を継続することができたのか。その問いかけに答える重い現実を提示します。
15 試験は受講学生の口頭発表で行います。持ち時間は一人5分以内です。詳細は最初の授業で説明します。
その他
教科書 この講義では映像で描かれたDVDが教材です。文書で書かれた教科書は使用しません。
成績評価の方法及び基準 試験(80%)、授業参画度(20%)
講義に出席し、活発に発言し、よく理解してくれる人を評価します。口頭試験のやり方は、最初の講義で説明します。

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