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歴史民俗学2

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科目名 歴史民俗学2
教員名 岸本昌良
単位数    2 学年 2~4 開講区分 文理学部
科目群 史学科
学期 後期 履修区分 選択
授業概要 歴史民俗学とは歴史を民俗学の視点で考える学問です。後期ではムラや町会の構成単位であるイエ(家族の系譜的存在)、イエの現在形である家族、家族を形成するうえで大きな役割を果たす結婚に関する民俗に焦点を当て、それがどのように形成されたかを史料をもとに考える。その際、婚姻論において重要な論文とみなされている「聟入考」(柳田国男 昭和3年)を検討し、民俗学と史学との関係を考察し、さらに日本歴史学において焦点の一つであった日本資本主義論へも言及する。
授業のねらい・到達目標 民俗(「ならわし」)は生活に深く結びついている。民俗学を学び、民俗の視点で歴史を考察することにより、大きな歴史の動きとは関わらないが、日々の生活に関わる歴史があることを認識できるようになる。また、結果として、学生諸君にこれからの社会生活に役立つ知識も提供することも、この授業のねらいの一つである。

この科目は文理学部(学士(文学))のディプロマポリシーDP6及びカリキュラムポリシーCP9に対応しています。
授業の方法 配布資料を中心に授業を進めます。関連する民俗行事の映像などがあれば使用します。毎回、出席票を兼ねてリアクションペーパーを提出してもらいます。そこでの感想、意見、質問により理解度を測ります。史学科の授業であり、多くの資料に接する事が必要なので、配布資料が多くなります。授業中に資料の説明をしますが、授業後、再度、配布資料を良く読んでください。そこで、分からないことがあれば、次回、質問してください。また、資料の性格上、旧字体の漢字があり、読みづらいとの声も聞きます。史学科の講義である以上、辞書引きに努力してください。
 また、この授業は2単位で、事前・事後学習は各2時間の学習を目安とします。
授業計画
1 [主題]ガイダンスとイエ(≒家族)
[詳細]後期の講義概要を説明する。そして、イエとは何かを柳田国男の生涯をたどりながら例示する。また、現代の家族の特徴であるとされる「核家族」の概念は歴史的な制約を持って生まれたことを明らかにする。
[事前学習]シラバスを事前に確認する事。
[事後学習]家及び核家族の概念を整理する事。
2 [主題]家族の現状 (地域性の確認)。
[詳細]日本は地理的には狭いが、人口は一億人を超え、地域により、異なる社会文化がある。家族も同じで、日本全体を同じ尺度で語るのは難しい。核家族が多い地域、三世代家族(直系家族・イエ)が多い地域など様々であり、それがどのような歴史のもとに生まれたかを考え、大家族の典型例と見做された、白川村の大家族と岩手の名子制家族についても言及する。
[事前学習]自分の家族をイエという視点から考える事。
[事後学習]家族形態を地域性の観点から整理する事。
3 [主題]高齢者の現状(敬老の日の誕生事情)。
[詳細]高齢化も現代の家族の特徴である。ただ、これも日本の中では一様ではない。また、単身高齢者が増加し、その結果、孤独死も増加している。日本の家族構造が変化しているのは確かである。ただ、高齢者を祝う日、敬老の日もあるが、この祝日も、戦後の歴史社会変化の中で生まれた祝日であり、家族の法である民法の改正により生まれた祝日であることを明らかにする。
[事前学習]老人の日と敬老の日の違い、類似点を考える事。
[事後学習]高齢者の存在形態を地域性の観点から整理する事。
4 [主題]民法(家族関係法)成立史 (「イエ」の観点から)。
[詳細]民法の改正はイエ制度の解体を目指していた。イエ制度は明治民法により構築されたと考えられているが、実態はどうなのかを明治民法前のボアソナード民法と比較し考察する。また、長子単独相続制度は明治民法制定時において世界的にどのような位置にあったかを示す。明治民法制定時に民法典論争があったが、民法制定当時に解釈と、日本資本主義論争時の解釈が異なっていることも明らかにし、資本主義論争時に、崩壊しつつあった名子制度を日本の「遅れた」イエの典型としたように、民俗学の成果が歴史学に取り込まれていることを示す。
[事前学習]民法典論争について、高校の教科書で確認する事。
[事後学習]民法典論争の歴史的位置づけが変化した要因を考える事。
5 [主題]結婚式の現状①(全国・式の種類)。
[詳細]結婚式がどのような形式なのかを明らかにし、挙式の種類、日取り、費用や仲人がどうなっているかを示す。そして、挙式種類別の模擬挙式のDVDを上映する。
[事前学習]結婚式とはどういうものかをイメージしておく事。
[事後学習]結婚式の種類を整理する事。
6 [主題]結婚式の現状②(結婚式の費用・出席者の全国比較)。
[詳細]都道府県別の結婚式費用の列席者数を比較し、違いがあることを示す。そして、特徴的な県の結婚式の実態を示し、結婚式が家族にかかわる行事である事を明らかにする。
[事前学習]結婚式が地域的差異があることを、前回配布した資料から読み取る事。
[事前学習]結婚式の規模の違いが生じた要因を考える事。
7 [主題]結婚式の現状③(結婚式の構成要素 日取り・結納・仲人・挙式・式場)。
[詳細]現代の結婚式を構成する要素、仲人、結納、日取り、神前結婚式、結婚式場、会費制などの歴史を明らかにし、結婚式も変遷があることを確認する。
[事前学習]第5回の資料を再読する事。
[事後学習]結婚式の変遷を神前結婚式を中心に整理する事。
8 [主題]「聟入考」考① 史学対民俗学。
[詳細]柳田国男の「聟入考」がどのような過程を経て成立したかを明らかにし、当時の東京帝国大学史学科の性格を明らかにし、文献資料だけでは解明できない歴史を民俗資料を活用する必できることを示す。
[事前学習]「聟入考」の第1章を読んでくる事。
[事後学習]「聟入考」がどのようにして誕生したかを整理する事。
9 [主題]「聟入考」考② 大正の内縁。
[詳細]「聟入考」は発表された当時、昭和初期・大正期は内縁の問題が新聞紙に取り上げられていた。そのような家族問題は当時の国史学・文献史学では検討されていなかった。そこを研究するのが民俗学であり、民俗学には経世済民の性格がある事を示す。
[事前学習]「聟入考」の第2章を読んでくる事。
[事前学習]内縁関係が生まれた原因を整理する事。
10 [主題]「聟入考」考③ 明治のイエ(『不如帰』を中心に)。
[詳細]明治の婚姻について、明治期のベストセラー、家庭小説『不如帰』を題材に考える。そして、小説の背景となった三島家・大山家の関係についても言及し、明治の家族について考える。
[事前学習]「聟入考」の第3章を読んでくる事。
[事後学習]『不如帰』にみられる明治の家の特徴を整理する事。
11 [主題]「聟入考」考④ 聟入から嫁入。
[詳細]平安時代の婚姻は『源氏物語』などから明らかなように、男性が相手の女性と文通し、拒まれないと判断すれば男の方から訪問していたが、鎌倉時代に入れば、女性が親の意思により、男のところに嫁入りする。この変化を詳しく史料をもとに明らかにする。
[事前学習]「聟入考」の第4・5・6・13章を読んでくる事。
[事後学習]婿取りから嫁入りの変遷を整理する事。
12 [主題]「聟入考」考⑤ ムラの結婚式。
[詳細]平安時代において男性が女性を訪問し、ちぎりを交わし、訪問期間がしばらく続き、いつのまにかその女性が男性のもとにやってくるという婚姻形式は、昭和初期においても、地方の農村、海村に存在していた。各地の事例を紹介し、昔の婚礼を映像で伝える。
[事前学習]「聟入考」の第8章を読んでくる事。
[事後学習]海村の婚姻例を整理する事。
13 [主題]「聟入考」考⑥ 研究の出発点・柳田の原体験。
[詳細]柳田「聟入考」で、若者組が婚姻に関与していることを指摘している。そこには柳田自身の恋愛経験が反映されている事を示す。
[事前学習]柳田国男の初期著作、抒情詩を詠んでくる事。
[事後学習]若者組と結婚の関係を整理する事。
14 [主題]「聟入考」考⑦ 「聟入考」への批判。
[詳細]柳田の「聟入考」にお対する最大の批判は、高群逸枝の『招婿婚の研究』である。そこで、高群は、平安時代において、男性は女性のもとに居続ける、母系制の存在を主張した。この説は一時は高校の教科書などにも採用されたが、これは高群が自分の都合の良い史料を集めた説であることが明らかになった。史料の利用の仕方を考える。
[事前学習]高群逸枝について調べておく事。
[事後学習]高群逸枝が何故誤った説を構成したのか、その原因を考える事。
15 [主題]英国の結婚式(日英比較)。
[詳細]英国の結婚式の様子を紹介し、日本との違いを指摘し、日本の婚姻の特徴を明らかにする。
[事前学習]欧米の結婚式について、調べておく事。
[事後学習]英国の結婚式における家の役割を整理する事。
その他
教科書 使用しない
参考書 柳田国男 『聟入考 (定本柳田国男集第15巻)』 筑摩書房 1969年
上記以外は授業中に指示する
成績評価の方法及び基準 レポート(50%)、授業内テスト(15%)、授業参画度(35%)
授業参画度は、毎回のリアクションペーパー等により評価します。
授業内テストとは、授業中にこちらから出す課題への小レポートのことです。その内容により評価します。
オフィスアワー 授業終了時、教室で質問を受けます。また、授業内に配布する出席票(兼質問票)に質問を記入していただければ、次回に回答します。

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