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ドイツ文学研究4

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令和2年度入学者 ドイツ文学研究4
令和元年度以前入学者 ドイツ文学研究4
教員名 保阪一夫
単位数    2 課程 前期課程 開講区分 文理学部
科目群 ドイツ文学専攻
学期 後期 履修区分 選択必修
授業の形態 遠隔授業で行う。具体的には、提示する個々の「課題」について資料およびテクストにより研究し、適宜、レポートを提出する。
「課題」に対応する研究対象とその資料に関する詳細、およびそれらの入手方法については、受講決定後に指示するので、受講者は(可能ならばメイル・アドレスを添えて)連絡すること。
受講者は、授業開始までに、BlackBoardのコースID20204252:2020ドイツ文学研究4(保坂一夫・後・火4)に登録し、授業に備えて準備をしておくこと。
授業概要 ペーター・ハントケ(Peter Handke)の文学と現代世界。 ― 昨年(2019年)のノーベル文学賞にオーストリアの作家ペーター・ハントケが選ばれたが、周知のように、この結果に対しては、賞賛の声だけでなく、主として旧ユーゴスラビア系の人々から、激しい批判も浴びせられた。何故なのだろうか。本年度は、この疑問を手がかりに、ハントケ文学について考え、併せて、現代社会における文学の意味と役割について研究してみたい。
授業のねらい・到達目標 ペーター・ハントケは、1942年生まれの、典型的戦後作家である。今学期は、今年度の予定内容をコンパクトにまとめ、先ず、彼のノーベル章受章決定をめぐる肯定的・否定的評価をテーマに、さまざまな見方を整理しその内容を確認する。続いて、後半には、その知見を前提に、デビュー時に彼が示した前世代への挑発的批判について、発言と作品に即してその内容を具体的に調べ、文学的出発に際して彼が何故そのような態度を取ったのか、取らざるをえなかったのか、考えてみることにする。そして、それを起点に、20世紀後半の文学が直面している難題とその歴史的・社会的背景について分析を試みる。
授業の方法 前半は、ノーベル賞に関する論争について、新聞や雑誌の資料を中心に問題点を整理する。後半は、ハントケの初期作品を選択し、彼の挑発的な文学デビューの歴史的・社会的意味について研究する。続いて、さらに可能であれば、彼が旧ユーゴスラビアに見出そうとした「故郷」とは何か、それを中心に考察し、そこに見出される、ハントケ文学の、文学的かつ社会的課題を確認して今年度の結びとする。
履修条件 学科の規定による。
授業計画
1 今学期の研究プランについて説明し、ハントケの経歴等を確認する。
次回からの研究資料とテクストを配布する。
【事前学習】ハントケについて、文学史、文学事典、新聞などで調べておく(Wikipediaが新しい)。 (2時間)
【事後学習】研究予定を確認し、配布されたテクストと資料を整理する。 (2時間)
2 ノーベル賞決定時におけるハントケの反応、そしてそれに対する社会の反応を調べ、その背景について考える。資料"Der Spiegel"の「まとめ」を中心に購読する。スエーデン・アカデミーの授賞理由も確認しておく予定である。
【事前学習】配布資料から彼の発言と社会の反応の具体例を読んでおく。 (2時間)
【事後学習】採り上げられている発言の内容をそれぞれ整理し、問題点を考えてみる。 (2時間)
3 自分の文学賞の表彰式でハントケ授賞を批判したユーゴ系作家サーシャ・スタニシチの発言やその他の南東ヨーロッパ諸国系の人々の批判について購読する。
【事前学習】配布資料で彼の発言と他の人々の反応について予習しておく。 (2時間)
【事後学習】彼らの主張について自分の理解をまとめてみる。 (2時間)
4 前回で読み切れなかった南東ヨーロッパ旧ユーゴ系の国々からの批判をさらに読み、その歴史的背景について考える。その際、ノーベル賞委員会外部委員ヘンリク・ペーターセンの説明を参考にする。
【事前学習】配付資料でさまざまな国の代表的発言について予習しておく。 (2時間)
【事後学習】「描写」の歴史的意味を確認し、ハントケの主張の内容を整理する。 (2時間)
5 ペーターセンの発言について詳しく考える。彼の発言に基づいて考えると、文学は政治や社会とどう関わっているのか。ハントケに対する批判は、いかなる範囲で意味があると言えるのか。
【事前学習】ペーターセンの発言をよく読んでくる。かなり長いが努力に期待する。 (3時間)
【事後学習】文学における政治の位置とその意味について整理してみる。 (2時間)
6 スイスの作家アードルフ・ムシュクのコメントを読み、論争の問題点とその整理の仕方について考える。ペーターセンのまとめを参考にする。
【事前学習】配布資料でムシュクの発言を読んで、彼の批判点をまとめてくる。。 (2時間)
【事後学習】彼の主張は論争全体との関係でどんな意味がある、考えてみる。 (2時間)
7 1966年のプリンストン「47年グループ」大会でのハントケの発言について考える。
ハントケの言う「描写インポテンツ」とはいかなる意味なのか、その問題について討論する。
【事前学習】配布公的資料で予習し、内容に眼を通しておく。 (2時間)
【事後学習】彼の発言内容とその意味について確認する。 (2時間)
8 ドイツ戦後文学の中心的担い手であった「47年グループ」とはどのような存在だったのか。グループの歴史について概観する。「47年グループ」における「描写」("Beschreibung")とはどのようなことか。それに対して、ハントケは文学はロマン的であると考えていた。ハントケは挑発的発言によって何を批判し何を主張したかったのか。彼のまとめ:"Zur Tagung der Gruppe 47 in USA"も参考にする。
【事前学習】「47年グループ」について調べてくる。早崎守俊『グルッペ四十七史』が参考になる。 (2時間)
【事後学習】文学がロマン的であるという主張の背景にあるハントケの文学観について考えてみる。 (2時間)
9 ハントケの戯曲『観客罵倒』("Publikumsbeschimpfung")について考えてみる。この戯曲によって具体的に何が罵倒されているのか。ハントケは若手作家として何を主張したかったのだろうか。
【事前学習】飜訳を参考に、この戯曲について輪郭を捉えておく。 (2時間)
【事後学習】ハントケが批判し攻撃した人々の文化観について整理してみる。 (2時間)
10 『ゴールキーパーの不安』("Die Angst des Tormanns beim Elfmeter")を参考に考えてみる。主人公は何が不安なのだろうか。それはハントケの文学的出発とどう関わるのだろうか。
【事前学習】出版資料(飜訳等)を参考にして内容を調べてくる。 (2時間)
【事後学習】ハントケは何と対立し、何に不安を感じていたのか、整理し確認しておく。 (2時間)
11 ハントケにおける、挑発、批判、不安、の意味について考える。この3点は若手作者としての彼の文学的出発に潜む難題とどう関係するのか。彼のエッセイ集:"Die Innenwelt der Außenwelt der Innenwelt"から2,3の文章を参考に読んでみる。
【事前学習】出版資料(飜訳等)を参考にしてこの問題点について考えてくる。 (2時間)
【事後学習】従来のハントケの発言との相違点について確認する。 (2時間)
12 ハントケは現代社会における文学的自己表現という難題とどう向き合っていたと考えられるか。
取り上げた発言、作品、およびエッセイのテーマからこの問題について検討する。
【事前学習】配布されたエッセイを読んでくる。 (2時間)
【事後学習】購読した内容を整理し確認する。 (2時間)
13 母の死と『幸せではないが、もういい』("Wunschloses Unglück")について考える。
ハントケは母の死によって何に気づいたのだろうか、意見交換する。
【事前学習】飜訳を参考にして、彼の問題把握の内容について考えてみる。 (2時間)
【事後学習】購読した内容を整理し確認する。 (2時間)
14 『反復』("Die Wiederholung")について考えてみる。ハントケはここに何を見出しているのだろうか。ハントケの求める「故郷」と彼のユーゴ問題における発言はどんな関係があるのだろうか。
【事前学習】飜訳を参考にして、彼の主張とその問題点を整理してくる。 (2時間)
【事後学習】彼の考え、憧れる「故郷」についてまとめてみる。 (2時間)
15 現在のハントケの作品におけるテーマを紹介し、それを参考に、今学期の研究全体について整理し、まとめの討論をする。最後に、今後の課題について考え、それを確認して締めくくりとする。
【事前学習】ハントケの文学的出発とユーゴ問題への発言の関わりについて総括的に考えてくる。 (2時間)
【事後学習】現代社会における文学表現はどこに可能性を見出しうるのか。残された課題を確認する。 (2時間)
その他
教科書 適宜プリントを配布する。
参考書 テーマに応じてその都度指示する。
成績評価の方法及び基準 レポート:テーマに応じて提出する数回のレポートによる、50%(50%)、授業参画度:テーマ理解の内容と精度による。 50%。(50%)
テーマへの関心を高め、理解の精度を上げるための努力を見て評価する。
オフィスアワー 火曜日の授業後が望ましいが、希望すれば、昼休みにも応じる。事前に事務を通じて連絡しておくこと。

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