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ジェンダー論

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令和2年度以降入学者 ジェンダー論
令和元年度以前入学者 ジェンダー論
教員名 郭立夫
単位数    2 学年 1~4 開講区分 文理学部
科目群 総合教育科目
学期 前期 履修区分
授業形態 対面授業
Blackboard ID 20230096
授業概要 男/女の二分法や異性愛はつねに「あたりまえ」や「本能」「自然」と考えられてきました。しかしそのような考え方は社会によってつくられ、私たちの日常生活や思考をも形作っています。就職活動のエントリシートの「性別」欄から日常的に使う言葉まで、性(ジェンダー・セクシュアリティ)に関する規範は影響を与えています。その帰結としてさまざまな性差別が生じています。性に関するさまざまな不平等や差別に抗い、フェミニズムやクィア・スタディーズと呼ばれる学術研究は私たちの社会を大きく変えてきました。
この授業では女性と性的マイノリティの歴史的位置付けや社会の捉え方の変遷を扱います。歴史や社会運動を振り返るだけではなく、ポップカルチャー(ディズニーやジブリ、アメドラなど)や現在進行形の「炎上」事件やニュースなどをとおして、ジェンダー・セクシュアリティ研究に関する知識や考え方を習得します。
授業のねらい・到達目標 ジェンダーとセクシュアリティの意味とそれをめぐる差別やポリティクスを認識し、考えること。
① 現代社会では当たり前のように思われている男女二分の性別観がいかに誕生し、そしてそれはいかに私たちの日常生活(家族構造、性別役割分担、職業分担、ファッションや身体など)を形作っているのかとを理解する。
② ジェンダーとセクシュアリティはどのように現代社会におけるあらゆる規範・権力と交差しているのかを理解する。ジェンダーとセクシュアリティの観点から現代社会の権力関係を認識できるようになる。
③ これらの構造によってどのような差別と暴力が生じるかを理解する。そしてそれらの暴力と差別を認識できるようになる。
世界諸国の歴史や政治、経済、文化、価値観、信条などの現状を概説できる(A-2-1)。
仮説に基づく課題や問題を提示し、客観的な情報を基に、論理的・批判的に考察することの重要性を説明できる(A-3-1)。
事象を注意深く観察して、解決すべき問題を認識できる(A-4-1)。
この科目は文理学部のDP及びCPの2,3,4に対応しています。
授業の形式 講義、演習
授業の方法 ① 基本的に講義をもとにするのですが、インターアクティブな授業を行います。コメントや授業中課題を活用して、交流を重視する。とりわけ、日常生活の経験をもとに、ジェンダーとセクシュアリティに関するテーマや問題を考え、議論する。
② 毎度授業終了時にコメントを回収する。コメントの内容は授業に関係ある話であれば基本的になんでも歓迎する。次回の授業の冒頭で講師が受けたコメントから一部を選び、それに対して口頭で返事する。
③ 自分の学習の過程を記録するために、ラーニングノート(紙か電子版)を作成することを推薦する。
履修条件 CHIPSによる抽選を行う。
授業計画
1 【ガイダンス&イントロダクション:フェミニズムとクィア理論とは何か】
授業の概要や到達目標などについてガイダンスを行います。また、フェミニズムとクィア理論の問題意識と基本的な思考の枠組みを紹介します。
【事前学習】シラバスとガイダンス資料を事前に読んでください。 (2時間)
【事後学習】ガイダンス資料を読み直し、日常生活やニュースをジェンダー・セクシュアリティの観点から振り返る。 (2時間)
【担当教員】郭立夫
【授業形態】対面授業
2 【なぜ「性」を考えるか:フェミニズムとクィア理論の葛藤と意義】
女性運動、ゲイ&レズビアン運動、そしてLGBT・クィア運動の関係と歴史的変遷を振り返ります。その変遷の中で、フェミニズム思想とクィア理論がいかに展開し、お互いに疑問や批判を向けたのかを説明します。そして最後に、フェミニズムとクィア理論にはなぜこのような緊張・共生関係があったのかを考えます。
【事前学習】配布資料を読んで、女性運動について調べ、自分の考えをまとめてください。 (2時間)
【事後学習】配布資料を読み直し、フェミニズムについて学んだことを確認してください。 (2時間)
【担当教員】郭立夫
【授業形態】対面授業
3 【近代家族の誕生】
近代家族の誕生および現代社会における家族とジェンダー規範を批判的に考えます。西洋社会と東アジア社会(中日韓台)において(現代的な異性愛中心な)婚姻制度がいかに導入され、それがいかに東アジア社会に文化・政治と合流して、今の「家族観」を作り出したのかを考えます。とりわけ、夫婦別姓について考えて行きたい。
【事前学習】配布資料を読んで、自分にとって家族はどのようなものなのか、その中にジェンダーはどのように機能しているのかについて考えてください。 (2時間)
【事後学習】配布資料を読み直し、家族規範と家族の近代化について学んだことを確認してください。 (2時間)
【担当教員】郭立夫
【授業形態】対面授業
4 【リプロダクティブ・ヘルス&ライツ】
出産について考え、「母性」という幻想を捉え直します。さらに医療と女性の身体、生殖補助技術についても批判的に学びます。とりわけ、東アジア社会において、女性と男性の身体、とりわけその生殖的な部分はいかに国家安全・国家の近代化に結びつけられてきたのかを振り返ります。扱う事例は代理出産、徴兵制における身体検査、そして中絶(中でもとりわけ障害者の生まれてくる権利)です。
【事前学習】配布資料を読んで、「代理出産」およびAIDについて調べ、考えてください。 (2時間)
【事後学習】配布資料を読み直し、「母性」や出産について学んだことを確認してください。 (2時間)
【担当教員】郭立夫
【授業形態】対面授業
5 【ジェンダーとケアワーク】
前回を踏まえて、ケア労働(家事・育児・介護)について学びます。とりわけ、ケア労働における女性の生理的機能(子宮と乳房を持つこと)を理由にした「女性が自然的なケア労働者」という考え方を批判的に考えます。そして、ケア労働における障害と老い(人間としての「能力」が失われていくこと)の問題について考えたい。
【事前学習】前回の内容と今回の資料を読んで、自分の生活経験に合わせ、ケア労働について考えてください。 (2時間)
【事後学習】配布資料を読み直し、ケア労働について学んだことを確認してください。 (2時間)
【担当教員】郭立夫
【授業形態】対面授業
6 【異性愛規範とホモフォビア】
これまでの授業に踏まえ、女性運動・フェミニズム思想における異性愛中心、シスジェンダー中心的な部分を考えます。とりわけ、このような問題はいつどのような文脈で提起され、フェミニズム思想にどのような影響を及ぼしたのかを振り返ります。
【事前学習】配布資料を読んで、シスジェンダーとヘテロセクシズムについて調べ、考えてください。 (2時間)
【事後学習】配布資料を読み直し、異性愛規範やホモフォビアについて学んだことを確認してください。 (2時間)
【担当教員】郭立夫
【授業形態】対面授業
7 【カミングアウト/クローゼット】
カミングアウトとクローゼットについて学び、アイデンティティやアイデンティテ東アジア社会においてどのような問題を起こしているのかについて考えます。とりわけ、カミングアウトが伴う危険性、そしてその危険性をいかに考えればいいのかについて考えたい。事例としては、2015年の一橋大学のアウティング事件と中国における同性愛転換治療を扱いたい。
【事前学習】配布資料を読んで、性的マイノリティのカミングアウトやアウティングについて調べ、自分の考えをまとめてみてください。 (2時間)
【事後学習】配布資料や参考書籍を読み直し、カミングアウトの意義やクローゼットが象徴するものについて理解をまとめてください。 (2時間)
【担当教員】郭立夫
【授業形態】対面授業
8 【レズビアン&ゲイ運動】
同性愛者の社会運動について学び、その運動がジェンダー・セクシュアリティ研究にどのような影響を与えてきたかを紹介します。とりわけアジアの運動を事例に、レズビアン&ゲイ運動がアメリカで誕生したという「神話」を捉え直します。すなわち、アメリカの文脈で誕生したレズビアン&ゲイ運動はいかにグローバル化して、それがどこまで有効的なのかについて考えたい。
【事前学習】配布資料を読んで、プライドパレードについて調べ、自分の考えをまとめてみてください。 (2時間)
【事後学習】配布資料を読み直し、レズビアン&ゲイ運動について学んだことを確認してください。 (2時間)
【担当教員】郭立夫
【授業形態】対面授業
9 【ジュディス・バトラーと批判的にクィア】
第2回でも触れたクィア理論の話をもう一度考えます。これまでの授業に踏まえて、フェミニズム運動とゲイ・レズビアン運動における様々な問題に対して、クィア理論はどのような思考を提供しているのかについて学びます。とりわけ、ジュディス・バトラーの理論的文脈と彼女が提起した「批判的にクィア」について考えたい。
【事前学習】配布資料を読んで、クィアという言葉について調べてください。 (2時間)
【事後学習】配布資料を読み直し、「批判的にクィア」とは何を指しているのかをもう一度確認してください。 (2時間)
【担当教員】郭立夫
【授業形態】対面授業
10 【「グローバルなLGBT運動」における西洋中心主義】
アメリカを中心とするLGBT運動がグローバル化される中、「LGBTの人権を支持するか」という問題はその国・政府が先進的であるかの判断基準の一つになっている。今回の授業は、中国とガーナのLGBT運動の事例から、そうした国際政治環境の中で、「LGBT人権を支持しない」国や地域では、どのような現状になっているのか。「LGBTの人権を支持する」という先進性は本当に世界中の性的マイノリティを平等な未来に導くうるのかなどの問題について考える。
【事前学習】配布資料を読んで、中国とガーナのLGBT運動について調べる。 (2時間)
【事後学習】配布資料を読み直し、LGBT運動における西洋中心主義はどのような問題を持っているのかについて考える。 (2時間)
【担当教員】郭立夫
【授業形態】対面授業
11 【インターセクショナリティ】
前回の授業に踏まえ、インターセクショナリティ(交差性)について考えます。とりわけ、フェミニズム思想における人種差別に焦点を向けたブラックフェミニズムを事例に、インターセクショナリティという概念の誕生とそれがいかにクィア・障害理論の中で用いられ、更新されているのかを振り返ります。
【事前学習】配布資料を読んで、アフリカ系アメリカ女性の差別について調べ、自分の考えをまとめてみてください。 (2時間)
【事後学習】配布資料や参考書籍を読み直し、インターセクショナリティとは。 何かを自分の日常生活に合わせて考えてみてください。 (2時間)
【担当教員】郭立夫
【授業形態】対面授業
12 【セクハラ、性暴力とフェミニズム運動の複雑性】
これまでの授業の内容を振り返って、フェミニズム運動を四つの波としてまとめます。それからとりわけインターネット上で隆盛している第四波フェミニズムの代表的な運動#MeToo運動を考えます。その特徴的な問題意識と戦略について勉強し、その運動が推進されている中で見えてくるフェミニズム運動の内部における差別や暴力を考えたい。
【事前学習】配布資料を読んで、セクハラや性犯罪について調べ、考えてください。 (2時間)
【事後学習】配布資料を読み直し、性暴力について学んだことを確認してください。 (2時間)
【担当教員】郭立夫
【授業形態】対面授業
13 【TERFから見るフェミニズムとクィア運動の連帯の限界】
前回の授業を踏まえ、今インターネット上で炎上しているトランスジェンダー排除的なラディカルフェミニストについて勉強し、その言説を批判的考えます。たとえば、「ハリー・ポッター」の著者のJ.Kローリングさんの問題発言や、東京2020でみられたニュージーランドのトランス女性選手の試合参加についての議論を扱いたい。トランスジェンダーとは何かから、なぜ自ら「フェミニスト」だと掲げている人たちはトランスジェンダーを排除しているのかについて考えたい。
【事前学習】配布資料を読んで、トランスジェンダーについて調べ、考えてください。 (2時間)
【事後学習】配布資料を読み直し、女性の境界はどこにあるのかについて批判的に考えてください。 (2時間)
【担当教員】郭立夫
【授業形態】対面授業
14 【クィア理論と障害学の葛藤】
人のアイデンティティの流動性に注目して、その脱構築を試みてきたクィア理論は、実際な身体的な苦痛を経験している障害者の生活経験に対して有効的なのか?とりわけ、女性で、性的マイノリティで障害を持つ人の生活経験を考える時に、クィア理論と障害学をいかに合わせる、あるいは合わせないのかについて考えたい。この回の授業はAlison Kafer()の著書と理論を扱います。
【事前学習】配布資料を読んで、障がい(者)について調べ、自分の考えをまとめてください。 (2時間)
【事後学習】配布資料や参考書籍を読み直し、障がい/健常の二項対立、そして多様な属性の交差性について学んだことを確認してください。 (2時間)
【担当教員】郭立夫
【授業形態】対面授業
15 【クィアと教育】
授業の総括として、これまで学んだ内容を活用して、小学校から大学までの学校教育における「性教育」を批判的に考えます。とりわけ、異性愛中心主義とシスジェンダー覇権はいかに私たちの教育システムに取り込まれているのかを考えます。とりわけ「クィアペダゴギー」について学びます。
【事前学習】配布資料を読んで、自分が受けてきた学校教育における性差別や異性愛中心主義について考えてください。 (2時間)
【事後学習】配布資料や参考書籍を読み直し、あらゆる差別構造や規範を乗り越えた「性教育」の可能性について考えてください。 (2時間)
【担当教員】郭立夫
【授業形態】対面授業
その他
教科書 使用しない
参考書 使用しない
成績評価の方法及び基準 レポート:期末レポート(40%)、授業参画度:授業態度や発言など(30%)、授業のコメント(30%)
オフィスアワー 金曜3限から

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