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美学史特殊講義4

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令和2年度以降入学者 美学史特殊講義4
教員名 高橋陽一郎
単位数    2 課程 前期課程 開講区分 文理学部
科目群 哲学専攻
学期 後期 履修区分 選択必修
授業形態 対面授業
Canvas LMSコースID・コース名称 WA1001282 2024美学史特殊講義4(高橋陽一郎・後・火4)
授業概要 今年度は、ショーペンハウアー(Arthur Schopenhauer, 1788-1860)の主著『意志と表象としての世界(Die Welt als Wille und Vorstellung)』正編(1818[1859])を、(ドイツ語原文を適宜参照しつつ)日本語で読解しながら、無意識、狂気、天才(以上、美学的問題)、生の苦悩、退屈、生殖と死、倫理的行為、解脱(以上、倫理的・宗教的問題)等の問題について考える。
 後学期は前学期のつづきで、第61節から第66節までの内容を解説したあと、倫理的境地としての「同苦/同情」(第67節・第68節)、自殺論(第69節)、「意志の否定」(第70節・第71節[最終節])を講読する予定。
授業のねらい・到達目標 ショーペンハウアーは西欧世界最大のペシミズムの哲学者として知られ、前年度まで二年をかけて読んだニーチェの『悲劇の誕生』成立にも多大の影響を及ぼした。今年度の授業もこうした「生の哲学(Lebensphilosophie)」研究の一環に位置づけられる。
 ショーペンハウアーの主著『意志と表象としての世界』は、世界の本質、人生の本質に関する哲学者自身の認識と考察の集大成であるが、同時に読者を同じ認識に誘うべく、独特の構造をもって書かれた著作でもある。苦悩の根源を欲望(意志)に見出し、そこから解脱する道(美的観照と意志の否定)を説くことで、西欧の<理性主義>と<力の文明>に警鐘を鳴らし、合わせて西欧世界に東洋思想(ウパニシャッド哲学や仏教)の重要性を伝えた。彼のこのような思想がその後の哲学はもとより、藝術(ワーグナー、印象主義、象徴主義、表現主義、シュルレアリスム等)や文学(プルースト、トーマス・マン、森鷗外等)、心理学(フロイト等)に与えた影響は計り知れない。そのアクチュアリティを受講者各自の関心から汲み取り、自己の美学的・倫理学的思索を鍛錬することが本講義の第一の目的である。この目的が、外国語文献を(恣意的にではなく)正確に読解することによって達成されるならば、受講者はテキスト・クリティークの能力獲得という第二の目的も達成することになると思われる。
 なお、後学期は前学期以上に、倫理的・宗教的境地を哲学的に理解することへの比重が増す。さらに当該問題について書かれた学術論文を併読することで、受講者各自の論文執筆に資するための配慮が加えられる。
授業の形式 演習
授業の方法 授業の方法:【演習】
①参加者で日本語訳されたテキストを輪読してゆく。必要に応じてドイツ語原典も用意する。毎回次週の予定担当者を決め、予定担当者は担当箇所の内容を要約したり問題を摘出したりする。これに合わせて参加者全員で議論を重ねる。
②学期末に、授業内容と各自の研究課題をリンクさせた内容のレポートを1500字前後で提出いただく。
履修条件 なし
授業計画
1 前学期の内容を復習したあと、『意志と表象としての世界』第61節~第66節までの正義論や社会哲学について解説する。
【事前学習】参考文献によってショーペンハウアーの基本思想について復習する。 (2時間)
【事後学習】担当者が配布したプリントを精読し、ショーペンハウアーの正義論や社会哲学について理解する。 (2時間)
【授業形態】対面授業
2 『意志と表象としての世界』第67節:「同苦/同情」(1)―ショーペンハウアーの考える「愛」について―
【事前学習】古代ギリシア哲学における「愛」及びキリスト教的な「愛」について各自学ぶ。 (2時間)
【事後学習】『意志と表象としての世界』正編における「同苦/同情」についてまとめる。 (2時間)
【授業形態】対面授業
3 『意志と表象としての世界』第67節:「同苦/同情」(2)―ニーチェによる「同苦/同情」批判を学ぶ―
【事前学習】ニーチェによる「(ショーペンハウアー的)同苦/同情」批判を調べる。 (2時間)
【事後学習】第67節の内容をまとめる。 (2時間)
【授業形態】対面授業
4 『意志と表象としての世界』第68節:「同苦/同情」(3)―後期ショーペンハウアーの「同苦/同情」概念と比較する―
【事前学習】『倫理学の二つの根本問題』における「同苦/同情」概念に関する講義担当者の論文を読む。 (2時間)
【事後学習】「自己愛」や「泣く」という行為との異同について考え、メモを作る。 (2時間)
【授業形態】対面授業
5 『意志と表象としての世界』第68節:「同苦/同情」(4)―「同苦/同情」と「意志の否定」の連続性・非連続性について考える―
【事前学習】「意志の否定」と「同苦/同情」との異同について考える。 (2時間)
【事後学習】第68節前半の内容をまとめる (2時間)
【授業形態】対面授業
6 『意志と表象としての世界』第68節:「意志の否定」(1)―「意志の否定」はなぜ「矛盾」と言われるのか、という問題について考える―
【事前学習】解脱と意欲との関係について自分の考えをまとめてくる。 (2時間)
【事後学習】「意志の否定」に関する先行研究を調べる。 (2時間)
【授業形態】対面授業
7 『意志と表象としての世界』第68節:「意志の否定」(2)―「意志の否定」と「エゴイズム」との関係について考える―
【事前学習】「意志の否定」(解脱)とエゴイズムとの関係についてノートしてくる。 (2時間)
【事後学習】授業担当者の著書『藝術としての哲学』の第六章を読む。 (2時間)
【授業形態】対面授業
8 『意志と表象としての世界』第68節:「意志の否定」(3)―意志の否定の「次善の道」は本当に「次善」なのか、という問題について考える―
【事前学習】「意志の否定」の二つの道のそれぞれの特徴について理解する。 (2時間)
【事後学習】第68節後半の内容をまとめる。 (2時間)
【授業形態】対面授業
9 『意志と表象としての世界』第69節:「自殺論」―その真意、後期思想との異同について―
【事前学習】第69節を読み、その内容をまとめておく。 (2時間)
【事後学習】後期ショーペンハウアーの自殺論(岩波文庫ほか)を読み、主著のそれと比較する。 (2時間)
【授業形態】対面授業
10 『意志と表象としての世界』第70節:「意志の否定」(4)―「<完全な>意志の否定」の可能性について考える:身体との関係、後期思想との異同問題について
【事前学習】西洋思想史において究極的境地として想定される認識論的・実践的立場について自分で考えたことをメモしてくる。 (2時間)
【事後学習】「意志の否定」と「身体」というテーマで小レポートを執筆する。 (2時間)
【授業形態】対面授業
11 『意志と表象としての世界』第70節:「意志の否定」(5)―意志の否定における「理性」(思慮)の役割について考える―
【事前学習】東洋思想史において究極的境地として想定される認識論的・実践的立場について自分で考えたことをメモしてくる。 (2時間)
【事後学習】第70節の内容をまとめる。 (2時間)
【授業形態】対面授業
12 『意志と表象としての世界』第71節:「意志の否定」(4)―「無(Nichts)」について、大乗仏教との関係について―
【事前学習】あらかじめ第71節を読む。 (2時間)
【事後学習】「哲学と<無>」というテーマで小レポートを執筆する。 (2時間)
【授業形態】対面授業
13 板橋勇仁著『底無き意志の系譜―ショーペンハウアーと意志の否定の思想』における自由論を検討する(1):第一章の講読と検討
【事前学習】受講者それぞれの立場から「自由とは何か」についてメモしてくる。 (2時間)
【事後学習】『底無き意志の系譜』第一章を批評する。 (2時間)
【授業形態】対面授業
14 板橋勇仁著『底無き意志の系譜―ショーペンハウアーと意志の否定の思想』における自由論を検討する(2):第二章の講読と検討
【事前学習】自分が研究対象としている思想とショーペンハウアーの思想とを比較思想的に論じてみる。 (2時間)
【事後学習】底無き意志の系譜』第二章を批評する。 (2時間)
【授業形態】対面授業
15 前学期のまとめ:ペシミズムの表現としての哲学
【事前学習】仏教のペシミズムについて調べ、ショーペンハウアーの思想と比較してみる。 (2時間)
【事後学習】これまでの授業内容を学期末レポートとしてまとめる。 (3時間)
【授業形態】対面授業
その他
教科書 ショーペンハウアー(西尾幹二訳) 『意志と表象としての世界Ⅱ・Ⅲ (中公クラシックス)』 中央公論新社
中公クラシックスの『意志と表象としての世界』はⅠ・Ⅱ・Ⅲの分冊になっており、授業で使用するのはこのうちⅡとⅢであるが、Ⅰも含め全巻揃えておくのが望ましい。ドイツ語原典は講義担当者のほうで準備するが、これも各自で好みの出版社のものを購入しておくと一層好ましい。
参考書 板橋勇仁 『底無き意志の系譜―ショーペンハウアーと意志の否定の思想―』 法政大学出版局 2016年 第1版
高橋陽一郎 『藝術としての哲学―ショーペンハウアー哲学における矛盾の意味―』 晃洋書房 2016年 第1版
参考書の使用箇所はコピーで配布する。
成績評価の方法及び基準 レポート:レポートは求めるテーマと内容、提出状況を見て評価します。(50%)、授業参画度:授業参画度は、出席状況や質問の頻度、議論への参画等によって評価します。(50%)
オフィスアワー 授業終了後に随時行う。

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