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総合研究1~8(ジャンルから見る漫画の読み方)

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令和7年度以降入学者 総合研究1~8(ジャンルから見る漫画の読み方)
令和2年度以降入学者 総合研究1~8(ジャンルから見る漫画の読み方)
教員名 八木悠允
単位数    2 学年 1~4 開講区分 文理学部
科目群 総合教育科目
学期 後期 履修区分 選択
授業形態 対面授業
授業概要 本授業は、漫画という大衆的メディアを通じて、現代日本社会の思想・制度・感情構造を学問的に読み解く。各ジャンルを記号論・文化史・社会理論の枠組みで分析することで、学生は「物語」「ジェンダー」「労働」「欲望」といった普遍的テーマをメディア横断的に理解する力を養う。漫画を「社会を映す鏡」でなく、「社会を構成する装置」として捉える批評的視座を形成することを目的とする。
授業のねらい・到達目標 学生は、漫画ジャンルを社会理論と結びつけて分析し、作品と社会構造との関係を論理的に説明できる力を身につける。

到達目標
1. 漫画ジャンルの成立背景を社会理論と関連づけて説明できる。(A-2-2)
2. ジェンダー・資本・公共圏などの概念を用いて作品を分析できる。(A-3-2)
3. ジャンル形成を制度・市場の観点から概説できる。(A-2-1)
4. 漫画の芸術性について理論的立場を提示できる。(A-3-2)
5. 討議を通じて自らの見解を論理的に述べることができる。(A-6-2)

この科目は文理学部のDP及びCPの1,2,3に対応しています。
授業の形式 講義、演習
授業の方法 講義を基礎としつつ、毎回具体的な漫画作品を取り上げ、理論と照合しながら分析を行う。

授業内で短い分析課題を実施し、次回授業で講評を行う。
レポートについては提出後に講評とコメントを返却する。

ディスカッションを適宜取り入れ、理論と具体例の接続を重視する。
授業計画
1 導入として、日本における漫画の読書環境・出版制度・教育制度との関係を確認し、漫画が「日常の記号体系」として機能していることを示す。ピエール・ブルデューの「文化資本」概念を参照し、漫画消費と社会階層の関係を考察する。(A-2-2)
【事前学習】文化資本と聞いて、想像するもの、あるいは調べたものをまとめておく。 (1.5時間)
【事後学習】授業内容を踏まえ、自身の漫画消費経験と社会的背景の関係を8整理する。 (1.5時間)
2 戦後の児童漫画を対象に、占領期以降の教育政策と道徳観がどのように漫画表現を規定したかを分析する。教育的ナラティヴ(例:努力・協調・礼儀)がいかに文化的ヘゲモニーとして機能していたかを文化史的に検討する。(A-2-2)
【事前学習】占領期以降の教育政策の特徴を調査し、「努力」「協調」などの価値語を整理する。 (1.5時間)
【事後学習】教育的ナラティヴが漫画作品内でどのように表現されているかを具体例でまとめる。 (1.5時間)
3 少年漫画のジャンル成立を、ジェンダー研究と社会史の視点から捉える。近代日本の「少年」概念の誕生(明治期の少年雑誌)を起点に、戦後の「努力・友情・勝利」の価値体系を、国家・資本・教育の三要素と関連づけて考察する。(A-3-2)
【事前学習】明治期の少年雑誌の特徴を調査し、「少年」概念の成立背景を整理する。 (1.5時間)
【事後学習】「努力・友情・勝利」の価値体系を社会構造と結びつけて図式化する。 (1.5時間)
4 少女漫画を「女性的表現」の確立として捉え、戦後フェミニズムと感情表現の関係を分析する。内面描写・感情線・花のモチーフなどの記号的要素を、記号論的視点から読み解く。ジャンル形成における読者の能動的参与も考察する。(A-3-2)
【事前学習】少女漫画作品を1例選び、内面描写やモチーフの特徴を整理する。 (1.5時間)
【事後学習】感情表現とジェンダー表象の関係について文章化する。 (1.5時間)
5 1970〜80年代に登場した青春漫画を、「感情のリアリズム(realism of affect)」の観点から読む。現実逃避的ではなく、社会的現実に直面する若者像の出現を、消費社会論(ボードリヤール)と結びつけて論じる。(A-3-2)
【事前学習】消費社会とはなにか、考えを言語化しておく。 (1.5時間)
【事後学習】青春漫画における若者像の変化を社会背景と関連づけてまとめる。 (1.5時間)
6 知識や教養をテーマとする「カルチャー漫画」を扱い、知の視覚化の方法を分析する。エコノミー、歴史、医療、食文化など多様なテーマがどのように娯楽化され、知の民主化をもたらしたかをメディア文化論的に考察する。(A-2-1)
【事前学習】知識漫画の具体例を1冊選び、扱われているテーマを整理する。 (1.5時間)
【事後学習】娯楽化と教育性の両立構造をまとめる。 (1.5時間)
7 ファンタジー漫画を、ナショナル・アイデンティティの変容と結びつけて検討する。戦後から2000年代にかけての「日本的精神」「他者としての異世界」表象を分析し、アンダーソンの「想像の共同体」概念を援用する。(A-3-2)
【事前学習】ファンタジー作品を選び、ジャンル内でのその作品の立ち位置を把握する。 (15時間)
【事後学習】異世界表象と国家意識の関係を具体例で整理する。 (15時間)
8 芸術や創作を題材とする漫画を、作者概念(バルト「作者の死」)との関連で分析する。「天才」や「努力」といった神話が、いかに物語的・制度的に再生産されるかを批評理論の観点から考察する。(A-3-2)
【事前学習】作者と作品の関係について言語化しておく。 (1.5時間)
【事後学習】創作神話の再生産構造を整理する。 (1.5時間)
9 大人向け漫画を、ユルゲン・ハーバーマスの「公共圏」理論に基づき再解釈する。漫画が新聞や評論に代わる社会的言説空間として機能してきた事例(労働・政治・倫理)を分析し、社会批評のメディアとしての位置づけを議論する。(A-3-2)
【事前学習】年齢層別の漫画、という概念について言語化しておく。 (1.5時間)
【事後学習】漫画における社会批評的事例をまとめる。 (1.5時間)
10 スポーツ漫画における身体の表象を通じて、規律・根性・勝利といった戦後的イデオロギーを読み解く。ミシェル・フーコーの「規律訓練型社会」概念を用い、身体の規範化と個人の抵抗のダイナミクスを考察する。(A-3-2)
【事前学習】スポーツ漫画作品を一作品通読しておく。 (15時間)
【事後学習】身体表象と社会規範の関係を整理する。 (1.5時間)
11 ギャンブル漫画を資本主義的欲望の寓話として分析する。運と合理性、個人と制度の緊張関係を描く構造を、社会哲学的に解釈する。マルクス的疎外論および現代資本主義批判(ギー・ドゥボール「スペクタクルの社会」)を参照する。(A-3-2)
【事前学習】ギャンブル漫画を通読しておく。 (15時間)
【事後学習】欲望と制度の関係を物語構造から分析する。 (1.5時間)
12 食を描く漫画における階層・文化資本の表象を扱う。ブルデューのを理論的枠組みとして、味覚の社会的構築を読み解き、食文化とアイデンティティの交差を探る。(A-2-2)
【事前学習】食文化に関連した作品を通読しておく。 (15時間)
【事後学習】食漫画の具体例を理論と関連づけてまとめる。 (1.5時間)
13 「漫画を描く漫画」をメタ・ジャンルとして取り上げ、自己言及的構造を分析する。ナラトロジー的観点から、語り手・編集者・読者の三者関係を再構築し、メディアの自己認識のあり方を問う。(A-1-2, A-3-2)
【事前学習】漫画を描く漫画を通読しておく。 (15時間)
【事後学習】三者関係を図式化し、自己言及構造を説明できるよう整理する。 (1.5時間)
14 出版社と雑誌文化の制度的分析。読者アンケートや編集方針など、メディア産業としてのジャンル形成メカニズムを明らかにする。ブルデューの「文学場(champ littéraire)」理論を用いて、ジャンルの社会的序列を考察する。(A-2-2)
【事前学習】これまでのジャンル各論を総合して、ジャンルとは何かを再度言語化しておく。 (1.5時間)
【事後学習】文学場概念の要点を整理する。 (1.5時間)
15 最終回では、「漫画は芸術か?」という問いを、ジャンル論と美学の交差点で再検討する。漫画を「第九の芸術」と呼んだアラン・レネやスコット・マクラウドらの理論を参照し、表現の制度的境界を批判的に考察する。(A-3-2, A-6-2)
【事前学習】芸術創作とテンプレート創作について考えておく。 (1.5時間)
【事後学習】ジャンル論と美学の観点から最終レポート構想をまとめる。 (1.5時間)
その他
教科書 使用しない
参考書 四方田犬彦 『漫画原論』 筑摩書房 1999年
水野英子、上田トシコ、むれあきこ他 『少女マンガはどこからきたの?: 「少女マンガを語る会」全記録』 青土社 2023年
茨木正治 『マンガジャンル・スタディーズ 』 臨川書店 2013年
他の必要文献に関しては、適宜配布する予定です。
成績評価の方法及び基準 試験(60%)、レポート(30%)、授業参画度(10%)
講義の内容を反映させて漫画を語れることを目的とします。そのために、リアクション・ペーパーを平常点とし(40%)、課題のレポートを、独自性と理解度の両面から採点します(60%)。
オフィスアワー 質問は簡単なものであれば授業内で受け付けます。その他はメールで受け付けます。

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